講談杮落とし

仕事の合間に読んだ本やドラマ、アニメ、映画の記録です。

『暗号学園のいろは 1』あらすじと感想(ネタバレ含む)

 こんばんは、こけらです。

 今回は、西尾維新さんの『暗号学園のいろは』第1巻です。

暗号学園のいろは 1 (ジャンプコミックスDIGITAL)

 

 原作は我らが西尾維新さん、作画は『少年法のコロ』『くずかごマウンテン』にて共同した岩崎優次さんです。現在のジャンプにはない路線の暗号ミステリ。「一体原作者の頭の中はどうなっているんだ!?」というような暗号の数々を、魅力的なキャラクターが解いてゆくという作品です。個人的にはかなり推しでして、実はアンケートはがきを出していたりします……(笑)

 

 

 以下、ネタバレまみれ。

 

 

 あらすじ

 来たる世界大戦に備えて、暗号解読に長けた少女達が集う軍人学校。その名も『暗号学園』!! そんな高校とは露知らずに入学してしまったいろは坂いろはは、ひょんなことから学園生活を懸けた暗号バトルに巻き込まれることに…。苦戦するいろはだが、その手にはあらゆる戦争を停められる鍵が握られていて…!? 十五の少女達が、銃後で暗号を解く!! 奇想天外な学園ミステリードラマ、開幕!!

 

 登場人物

 いろは坂いろは(いろはざか・いろは)・・・・・・・主人公・生徒(A組)

 

 東洲斎享楽(とうしゅうさい・きょら)・・・・・・・生徒(A組)

 徐綿菓子(おもむろ・ゆかこ)・・・・・・・・・・・生徒(A組)

 夕方多夕(ゆうがた・たゆう)・・・・・・・・・・・生徒(A組)

 

 絣縁沙(かすり・えんさ)・・・・・・・・・・・・・生徒(A組)

 

 海燕寸暇(うみつばめ・すんか)・・・・・・・・・・生徒(A組)

 朧そぼろ(おぼろ・そぼろ)・・・・・・・・・・・・生徒(A組)

 

 肉枝搾(にくえだ・しぼり)・・・・・・・・・・・・教官(A組)

 

 洞ヶ峠凍(ほらがとうげ・こごえ)・・・・・・・・・生徒(M組)

 

 

 いやはや久しぶりに体感しましたね、西尾さんの名付け。今作は『めだかボックス』のように九州地方に統一したという訳では無さそうです。統一性は今の所見られないのですが、ネーミングセンスが鈍色に輝いております。こちらも学園を舞台にした、西尾維新×暁月あきらが放つ、学園異能バトルとなっています。ぜひぜひ。

 

 

 

 内憂外患の企みを銃後から暴け!--YES,MA'AM!!

  いきなり肉枝教官の宣誓から、物語は始まります。暗号学園に入学した主人公、いろは坂いろは。その学園では、暗号を解いて解いて解きまくるという、そんな学校でした。いろは君の「だいたい! 一世紀近く前に日本は戦争を放棄――」という台詞がある通り、令和の現代とはまた異なった世界観のようです。まき散らしますねえ、伏線を(西尾さんのことなので、回収しないことも視野に入れておきましょう)。

 そしてチュートリアルにと配られたのが『自己紹介クロスワード』(★2)。

 これは言葉で説明するのが難しいので、ぜひ本編を読んでいただければと思います(笑)。

 いきなり暗号を解かされて狼狽するいろは君ですが、周囲の生徒たちは臆することなくそれを解いてゆきます。そして一番に提出したのが『美人さん』こと、東洲斎享楽でした。そんな彼女に肉枝教官は「お前なら別の進路もあっただろうに」と傍点を散らしながら聞きますが、東洲斎さんはこう答えます。

 「……平和ボケしたこの国の【言論弾圧】ケツを蹴り上げるためです」

 いいですね、西尾さん特有の、美人で口の悪い女の子。

 そんな異色のカリキュラムを初日から叩きこまれたいろは君は、図書室に突っ伏します。自己紹介クロスワードすら解けない自分に、半ば自己嫌悪を抱きながら。

 そんな時。

 

 突如登場する謎の逃亡者、洞ヶ峠凍。

 「――かっ、匿って!」

 その直後、美人さんこと東洲斎さんと徐さん、夕方さんの三人が来て、「ここに誰か来なかった?」と尋ねられるも、とぼけるいろは君。ここで、東洲斎さんからさらっと暗号学園の設定が明かされます。

「――どうして暗号学園に男子がいるの?」

 隣にいる徐さんが答えます。女子だけが暗号解読に取り組むというのも時節柄好ましくないということで、各クラスに約一名ずつ、どうでもいい男子が入学させられているのだとか。実質ハーレム状態って奴ですね。なのに全然ウハウハしない!この緊迫感!

 匿ってもらったお礼として、洞ヶ峠凍は、いろは君にある眼鏡を譲渡します。

 その後のいろは君と凍のやりとり――なんでこの学校に来たの? は、西尾節を感じますね。凍はこう言いました。

「暴力を振るわなくてもヒーローになれるから、だぜ」

 そしてそのまま去り行く凍。続けて課題に取り組もうと、渡された眼鏡を掛けてみると――。

 

 自己紹介クロスワード、クリア!しかし……

「謝りたいからツラ貸してくれる?」

 本来できるはずのない問題(自己紹介クロスワード)を見事解き切ったいろは君。しかしそのせいで、昨日の東洲斎一派にそんなことを言われ、屋上に呼び出されます。凍から何か受け取ったのではないか、私たちお友達でしょ(怖い)と詰められるいろは君ですが、啖呵を切り突っぱねます。

「友達は選ばなきゃね。ボクは人数や暴力で脅しをかけてくる奴とは、友達にはならない!」

 この辺りの主人公の芯の強さというか、ただ可愛いだけではないってところが、とても心くすぐられますね。ジャンプ漫画でここまで傍点つけまくるのって、この漫画くらいのものかも?

 それを聞いた東洲斎さんは、ある暗号(★5)を出します。

「オーケー。じゃあ嘘だったらあなた、三年間私達の下男ね。」

 その暗号とは、ここにいる東洲斎享楽、徐綿菓子夕方多夕(ここで本名が公開されました)のうち誰かを示す暗号文だそうです。出された暗号は、もう本誌か単行本を買って解読してみて下さい(かくいう私もちょっとチャレンジしてみましたが挫折しました)。窮地に陥ったいろは君は、昨日凍にもらった眼鏡を掛けます。そんな眼鏡程度で何が――と、思いますが……?

 

 解凍編(アイシー・コールド・リーディング)!

 出ました西尾維新得意の言葉遊び!良いですね、好きですよこういうの。

 なんと、凍から譲渡された眼鏡は、暗号を解読する機能の付けられたスマートグラスでした。解読とは言っても、暗号文が光って見えるというもの。それを糸口に、いろは君は暗号を見事解き、東洲斎一派を撃退します。暗号は、いろは坂いろは君自身を示すものでした。「ここにいる誰か」なんて言っておきながら自身を選ばせるとは、西尾維新らしいです。

 そんな眼鏡の性能を不思議に思ういろは君。そのグラスに搭載された超小型カメラから、どこかの部屋にいる洞ヶ峠凍は、大きな声じゃ言えないような台詞を、口にしました。

「いっそこのまま参戦してもらおうかな? 暗号学園に眠る500億M(モルグ)の、暗号資産の発掘戦争に」

 

 かくして、第1話了! 

 いやあ、1話だけで信じられない濃さでした。これが七話も続くの!!??流石は西尾維新さん、1話に詰め込む情報量が桁違いで、こうやってまとめるのも一苦労です。

 こんな風に各話毎に章分けして感想を書いていければ良いのですが、流石に冗長になってしまうのと、私情ですが体調が不安定なこともあり、今回のネタバレ含むあらすじはこの辺りにしておきます。

 

 感想

 めちゃくちゃ面白かったです!!!!!! 推しです! 絶対に続いて欲しいです!

 何よりこの漫画の評価したい箇所は、暗号を解けなくとも楽しめるところ、面白いと思えるところ。実際私も週刊誌掲載時に挑戦してみましたが、全く解けませんでした。にも拘わらず、面白いと思える状況、情景、登場人物たちの会話、配置によって、「面白い」が作られている。これは全く新しいジャンプ漫画と言っても過言ではありません(過言かもしれないですが……)。例えるなら、『バクマン。』にて、サイコーとシュージンが目指した邪道バトルの一種の成功例とでも言いましょうか。

『アンデッドアンラック』『逃げ上手の若君』のアニメ化も控えていますし、今のジャンプでは厳しい立ち位置にいる本作ですが、これからも本誌と単行本共に応援しようと思います。

 

 それでは今回はこの辺りで!

 擱筆

 

こけら